陰陽論は、中医学の理論体系の基礎となる哲学です。陰陽学説、陰陽思想ともいいます。
陰陽は一言でいうと、昼と夜、夏と冬、光と影など二つの対立する属性が相互に影響を与え合っているという考え方のこと。
このページでは陰陽論の概要や特性、人体への影響などを解説します。
陰陽論の概要
陰陽論とは、古代中国哲学の一つで自然界や宇宙、森羅万象の全ての事象は陰と陽のいずれかに属し、互いに対立し影響を与え合っているという思想のこと。
昼があれば夜があり
光があれば影がある
自然界のあらゆる事象は絶対的な存在ではなく、表裏一体の対立する存在と影響しあう相対的な存在であると考えられています。よく見かける太極図はこの陰陽思想を図解したものです。
陰陽の特性・法則
陰陽には安定した平衡状態を保つため、主に以下5つの法則があります。
陰陽互根
陰陽互根(いんようごこん)とは、陰陽は互いが存在することで成り立つという相互依存の考え方。陰と陽はどちらか単独では存在できないという意味です。
太極図を見ても、陽の中に陰が、陰の中に陽が存在していることが分かります。
陰陽制約
陰陽制約(いんようせいやく)とは、陰陽が互いにバランスをとるよう作用すること。陰陽は、どちらかが過剰にならないよう、もう一方を抑制する働きをします。
陰陽消長
陰陽消長(いんようしょうちょう)とは、陰陽のリズム変化、量的な変化のこと。陰陽は不変の状態ではなく、常に変化しています。
例えば一日の流れの中でも、朝から昼になり、陽が沈むと夜になる・・・と、陰と陽の動きが常に変化していることが分かります。
陰陽転化
陰陽転化(いんようてんか)とは、陰陽の質的な変化のこと。陰が極まると陽に転化し、陽が極まると陰に転化します。
四季を例に挙げると、夏至は陽気が最高度に達する日。夏至を境に陽気は陰気に転じ、徐々に陰気が増していきます。
そして冬至になると陰気が最高度に達し、冬至を境に陰気が陽気に転じ、また夏至に向かって陽気が増していくのです。
陰陽可分
陰陽可分(いんようかぶん)とは、陰と陽それぞれの中にも陰陽の対立する側面を内在しているということ。
一日の流れで見てみると、陽が昇る午前中は「陽の中の陽」、正午を過ぎ日暮れに向かう午後は「陽の中の陰」、日が暮れてから真夜中までは「陰の中の陰」、真夜中を過ぎ夜明けに向かう時間は「陰の中の陽」と分類されます。
陰陽の分類
自然界の事象は全て陰と陽のどちらかに分類されます。
ここではその分類の一例を表にまとめてみました。
【陰】に属するもの | 【陽】に属するもの |
静 | 動 |
寒 | 熱 |
夜 | 昼 |
暗 | 明 |
水 | 火 |
月 | 日 |
冬 | 夏 |
肉体 | 精神 |
血水 | 気 |
長い | 短い |
細い | 太い |
地 | 天 |
女 | 男 |
下 | 上 |
降 | 昇 |
内 | 外 |
収縮 | 膨張 |
湿潤 | 乾燥 |
集合 | 分散 |
吸気 | 呼気 |
死 | 生 |
自然界の陰と陽
陰陽の発想はそもそも天候からきているといわれており、季節の移り変わりと密接に関わっています。
人体の中の陰と陽
人体は大自然の縮図であるという考え(天人合一説)から、中医学では陰陽思想を人体にも当てはめ、生理機能の理解や病気の治療にも応用しました。
つまり、自然界だけでなく人間の身体にも陰と陽があり、そのバランスが崩れると不調につながると考えられてきました(「陰陽失調」)。
中医学における健康とは「陰陽のバランスがとれた状態」であることを指します。
参考文献
本記事は、下記リンク先の書籍を参考に作成しました。