夏は楽しい季節でもありますが、夏バテによる疲労や食欲不振など身体にさまざまな不調が起こりやすい時期でもあります。その原因は、暑さによって体内に熱がこもってしまい、心の機能が弱ってしまうため。
夏を元気に乗り切るためには、体の熱を冷まし、津液を補う役割を持つ食材やツボを活用し養生することが効果的です。このページでは、夏の時期に起こりがちな身体の不調とその対応策を、中医学や薬膳の観点からまとめています。
夏という季節の特徴
- 陽気が最も強く、陰は弱い
夏を二十四節気に分けると、立夏、小満、芒種、夏至、小暑、大暑までの6つの節気があります。一年の中で最も陽気が強くなる「陽気旺盛」の時期であり、日差しが強く暑い日が続きます。
- 一年で最も暑くなる時期
五行説では、夏は「火」に属します。火は明るい熱のエネルギーです。そのエネルギーを受けて草木はどんどん成長していき、私たちの身体も熱エネルギーによって活動的になります。
一方で身体に熱がこもりやすくなり不調をきたす原因にもなるため注意が必要です。
夏にいたわりたい臓腑

心!
心の働きは主に2つあります。
- 血を全身に巡らせる作用:肝に貯蔵された血を全身に循環させるポンプの役割を持つ
- 精神を安定させる作用:精神活動や思考能力を司る。睡眠もコントロールする
心の働きが弱まると、血を循環させる機能が低下するため、血行障害が生じます。その状態で心がさらに無理をして血を循環させようとすると心拍数が上がり動悸や息切れなどの症状が現れることもあります。
また、精神状態が不安的になり、イライラしがちになったり、記憶力や判断力の低下や睡眠障害をもたらすことも。
夏に起こりやすい症状
夏は五行において「火」に属し、一年で最も陽気が強く暑い日が続く時期。自然界と同じように私たちの身体も陽気がもっとも盛んになるため、体の熱を冷ますような養生が必要になります。
夏になると冷たいものが欲しくなるのは身体の熱を冷まそうとしているため。かといって冷やしすぎてしまうと臓腑の働きを鈍らせてしまうため注意が必要です。
また、夏は暑さによる暑邪が私たちの身体に悪い影響を及ぼし、体調不良の原因となります。
代表的な症状は以下の通り。
- 高熱
- 多汗
- のどの渇き
- 脱水症状
- 息切れ
- 脱力感
汗をたくさんかくことで体内の津液を消耗し、同時に気も排出してしまうため息切れや脱力感を伴うことも。暑さが人体の適応力を越えてしまうと熱中症となり重篤な場合は命を落とすことにもなりかねません。
のどが渇く前にこまめに水分と塩分を補給することが大切です。
そして日本の夏は高温多湿のため、梅雨に引き続き湿邪の影響もあなどれません。湿邪によって脾が消耗し、胃もたれや食欲不振、下痢などの症状を引き起こします。
- 胃もたれ
- 食欲不振
- 下痢
- むくみ
- 関節痛
夏を元気に乗り切るために
夏は心の機能が活発になり血を全身に巡らせる作用が強くなる時期です。
暑いからといってクーラーのきいた部屋にこもったりして、過度に身体を冷やしたり熱を抑え込むのではなく、しっかり水分補給をしながら身体を動かし、汗をかくことで熱を発散させ楽しい気持ちで過ごすのがおすすめです。
涼性や寒性、苦味の食材で熱を冷まし、酸味のある食材で津液を補うなど、暑さに負けないよう身体を整える養生がポイントです。体を温めてしまう温性や辛味の食材は控えるのがベター。
夏の養生に役立つ食材
■清熱解暑:熱を取り除き、心の働きを正常化する
苦瓜、緑豆、かに、豚肉、緑茶など
■生津止渇:津液を補い、のどの渇きを止める
トマト、豆腐、牛乳、白きくらげなど
■芳香化湿:気の巡りをよくし、食欲を増進することで湿を除く
パクチー(香菜)、山椒、レモン、みかん、ジャスミンティーなど
■養心安神:イライラや不眠などのストレスを解消する
牛乳、はちみつ、たまご、なつめ、蓮の実など
他にも夏の養生に役立つ食材はたくさんあります。積極的に摂ることで、暑さに負けない軽やかな体で夏を元気に乗り切りたいですね。